化粧品・コスメの広告における薬事法について(1)

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「乾燥による小じわを目立たなくする」の追加から一年

 化粧品の効能効果の一部改正から一年

化粧品の効能効果に56番目の効果、「(56) 乾燥による小ジワを目立たなくする。」が追加されたのは、ちょうど1年前、2011年7月21日のことでした。

この効果について標榜できるのは、日本香粧品学会が平成18年に公表した「化粧品機能評価法ガイドライン」に基づく試験、またはこれと同等以上の適切な試験をメーカー(製造販売業者)の責任において行い、その効果を確認したうえで、試験を行なった「効能評価試験済み」の製品に限る、とされています。

新たな効果が謳える、という化粧品業界、また関連した広告業界では表現の範囲が広がった……と喜ばしいこととしたいところでしたが、この効能評価試験は比較的高価な試験とされており、改正後の市場を調査しましても、大手企業やデパートブランドにちらほらと新製品として登場した程度、といった印象。

また、その広告においてもいわゆる「攻め」の姿勢はうかがえず、「乾燥による小ジワを目立たなくする」を言い換えることなくそのまま使用されているケースがほとんどでありました。
「乾燥による小じわを目立たなくする」という表現自体は、厳密に「読み替えは一切不可」とされているわけではないはずです。
とはいえ、『加齢によるシワ等を含め、全てのシワに効果があるものと誤認される表現をしてはいけない』とされていること、また『新効果』であることで、行政の目が向いていることが容易に想定できる、というところから、無難にそのままの表示としていることも考えられます。
 

 「抗シワ」効果の標榜で措置命令

消費者庁は先月末、「抗シワ」をうたった化粧品の広告は根拠がないとして、化粧品販売会社「クリスタルジャポン」「コアクエスト」(福岡市)に対し、景品表示法違反(優良誤認)で再発防止を求める措置命令を出しています。

株式会社クリスタルジャポン及び株式会社コアクエストに対する景品表示法に基づく措置命令について
 ⇒ http://www.caa.go.jp/representation/pdf/120628premiums_1.pdf
消費者庁は、本日、株式会社クリスタルジャポン(以下「クリスタルジャポン」という。)及び株式会社コアクエスト(以下「コアクエスト」という。)に対し、景品表示法第6条の規定に基づき、措置命令(別添1及び2参照)を行った。
クリスタルジャポン及びコアクエストがウェブサイトにおいて行った「アゲハダラインゼロ」と称する抗シワ効果を標ぼうする化粧品の表示について、景品表示法に違反する行為(表示を裏付ける合理的根拠が示されず、優良誤認に該当)が認められた。
なお、本件は公正取引委員会(公正取引委員会事務総局九州事務所)による調査の結果を踏まえ、当庁が措置命令を行うものである。

【景品表示法違反(優良誤認)とされた表示内容】
●気になるシワを一瞬で!?形状記憶
●継続使用により、シワが引き伸ばされた状態をお肌が記憶してくれます。
●深く刻まれたシワは、継続使用による形状記憶によって、また正常なターンオーバーが行われることによって徐々に薄くなっていきますので、最低3ヶ月の継続使用(シワの深さや長さにより異なります)をおすすめします。ターンオーバーが乱れている方は、半年以上はお使いください。
上記の表示内容について、裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、2社から資料が提出されたが、当該表示の裏付けとなる
合理的な根拠を示すものとは認められなかった。
「アゲハダラインゼロ」について、実際の広告内容がリンク先pdfに掲載されています。
当該製品は「化粧下地」のようです。
メーキャップ製品であれば、事実の範囲内ではありますが、メイクすることによりしわを目立たなく見せる、といった標榜は、即不可とされるものではないと思われます。当該の広告にはそのような記述もありながら、指でしわを伸ばしたその物理的な力の加わりを「肌に形状記憶」させ、実際にシワ自体が薄くなっていく……というところまで標榜されています。
そして実際この行き過ぎた標榜について、「景品表示法違反(優良誤認)」として指摘されているわけです。
 

「シワ」を訴求できるケース

シワを訴求としたいのであれば、現状では2つのケースが考えられます。
まず一つは、効能評価試験を行い、「乾燥による小じわを目立たなくする」との効果を標榜できる製品として売り出すケース。
二つ目は、メーキャップ製品として「しわを目立たなくみせる」と訴求するケース。
当然ながら双方とも「事実に基づき」が前提です。
効能評価試験を行っていないのに「効能評価試験済み」として「乾燥による小じわを目立たなくする」と標榜することはできません。
また、メーキャップ製品でなく、またそのような成分が含まれていないのに「しわを目立たなくみせる」とすることもできません。

これについては化粧品等の適正広告ガイドラインにも以下のように記されています。
また、近年よく見かける、塗布したものが乾くことで収縮し、物理的にしわを伸ばす、といった趣旨のメーキャップ製品についても補足されている部分があります。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
E6 しわ予防・解消、若返り・老化防止、顔痩せ効果等の表現
……ただし、化粧品等でも、化粧によるメーキャップ効果等の物理的効果としてのシワ等の外観的変化を表現する場合は、事実でありメーキャップ効果等の物理的効果が事実であることが判ること。
(一部抜粋)
2.エイジングケア表現の範囲の具体例
〔参考〕
……メーキャップ等の物理的効果は、化粧品の55の効能効果の範囲以外であっても、化粧品の効能を逸脱したものであると判断されていないことから、メーキャップ効果等の物理的効果による「エイジングケア」を表現することは、事実に反しない限り可能である。
 
例:メーキャップ効果等の物理的効果によって加齢による肌の老化又は加齢によらない紫外線や乾燥等による肌老化を目立たなくさせる旨の表現
 ・皮膜形成成分が乾燥過程で収縮する等の物理的効果によってしわを伸ばすエイジングケア(ただし、物理的効果によることが事実である場合に限る)
(一部抜粋)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「乾燥による小ジワを目立たなく」が効果に追加されて一年。
その間に「抗シワ」をうたったとして措置命令が出たのが今回の1件。
3月の「株式会社リソウに対する景品表示法に基づく措置命令」についても、内容としては「シミ・シワ改善」を謳ったものであったことは、記憶に新しいところです。
こちらも行政が「抗シワ」について目に留めたものと考えてもあながちそう違わないのではないでしょうか。
(※実際に対象表示となったのは、「シミ・シワ改善」でなく、 受賞表示や日本初の化粧品、といった他の表示内容。
 「株式会社リソウに対する景品表示法に基づく措置命令」に関してはこちらをご参照ください。
 ⇒ http://www.caa.go.jp/representation/pdf/120308premiums_1.pdf
効能評価試験済み製品の効果標榜について、行政の目が向いている可能性を考えれば、化粧品広告全体を通して監視が強まっていると想像するのは容易です。
シワへの標榜、これは女性をターゲットに大変魅力的な訴求ポイントです。
ルールをしっかり把握し、製品の特性に合わせて「標榜可能な範囲」を外れない表現づくりが望まれます。
 
 
 
 
 

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