Vol.237 実践薬事マーケティング
~「特定保健用食品」の広告表現について~
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▽▲どうせ飲むなら「トクホコーラ」という
ビジネスマンが急増中?!▽▲
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今、健康食品業界では「トクホ」がひそかなブーム!
そのきっかけとなったのが昨年、各社から発売された
「トクホのコーラ」。
現在でも「どうせ飲むならトクホコーラで!」という
ビジネスマンが急増するなど、引き続き高い支持を集めています。
商品のヒットで再び注目されることとなった
「特定保健用食品(トクホ)」。
広告では「脂肪」や「血圧」「おなかの調子」など、
健康食品では即不可となりそうな表現が目立ちますが、
一体どこまでが標ぼう可能なのでしょうか?
具体的なルールについておさらいをする前に、
まずは消費者の方が「トクホ」についてどのような意識を
持っているのかアンケートからさっそく見ていきましょう!
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▽▲今後のヘルスケアにはやっぱり「トクホ」?!▽▲
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■出典
マーシュ
『トクホに関するアンケート』より一部抜粋
■調査結果
関東圏に在住する男女500人
■調査対象者
20歳~60歳の男女
(性別構成:男性 50%、女性 50%)
(年齢構成:20代 20%、30代 20%、40代 20%、
50代:20%、60代:20%)
┌───────────────────────────────
│Q1.あなたは「トクホ(特定保健用食品)」をご存知ですか?
│ <単一回答>
│
│ ◎言葉だけでなく意味までわかる ・・・191人
│ ◎なんとなくわかる程度 ・・・292人
│ ◎聞いたことがない、わからない ・・・17人
└───────────────────────────────
「トクホコーラ」のヒットで多くのマスコミに取り上げられたせいか
「言葉だけでなく意味までわかる」と回答した人が何と40%近く!!
「聞いたことがない、わからない」がわずか3.4%と
かなり認知されてきていることが伺えます。
続いての質問は
「トクホ」の「効果」や「トクホの位置づけ」など詳細に
関する認知について。広告などでよく目にしますが皆さんどれだけ
認知しているのでしょうか??
┌───────────────────────────────
│Q2.【Q1で「トクホ」を意味までわかる、
│ なんとなくわかると回答した方】
│ 「トクホ(特定保健用食品)」の効果についてご存知ですか?
│ あてはまるものを全てお選びください
│
│ 『血圧や血中コレステロールを正常に保つことを助けてくれる』
│ ◎言葉だけでなく意味までわかる ・・・142人
│ ◎なんとなくわかる程度 ・・・162人
│
│ 『脂分の吸収を抑えてくれる』
│ ◎言葉だけでなく意味までわかる ・・・126人
│ ◎なんとなくわかる程度 ・・・146人
│
│ 『特定の保健の効果が保証されている食品』
│ ◎言葉だけでなく意味までわかる ・・・122人
│ ◎なんとなくわかる程度 ・・・137人
│
│ 『お腹の調子を整えてくれる』
│ ◎言葉だけでなく意味までわかる ・・・106人
│ ◎なんとなくわかる程度 ・・・70人
│
│ 『体脂肪を減らしてくれる』
│ ◎言葉だけでなく意味までわかる ・・・105人
│ ◎なんとなくわかる程度 ・・・121人
│
│ 『食品機能を厚生労働省が保証する制度』
│ ◎言葉だけでなく意味までわかる ・・・90人
│ ◎なんとなくわかる程度 ・・・97人
│
│ 『血圧を正常にしてくれる』
│ ◎言葉だけでなく意味までわかる ・・・78人
│ ◎なんとなくわかる程度 ・・・85人
│
│ 『体調を整えてくれる』
│ ◎言葉だけでなく意味までわかる ・・・68人
│ ◎なんとなくわかる程度 ・・・50人
│
│ 『日々の食事から十分に摂取できない栄養素を補う為の食品』
│ ◎言葉だけでなく意味までわかる ・・・61人
│ ◎なんとなくわかる程度 ・・・57人
│
│ 『体重を落としてくれる』
│ ◎言葉だけでなく意味までわかる ・・・38人
│ ◎なんとなくわかる程度 ・・・18人
│
│ 『食品機能を消費者庁長官が保証する制度』
│ ◎言葉だけでなく意味までわかる ・・・35人
│ ◎なんとなくわかる程度 ・・・35人
│
│ 『あてはまるものがない』 ・・・21人
└───────────────────────────────
「トクホ」の詳細については広告などのPRの反響か?
「血圧やコレステロール」「脂分の吸収」や「体脂肪」
「お腹の調子を整える」と言った効果効能を知っていると
いう人が多いという結果に。
利用しているかどうかはさておき、
やはり「効果」への関心が高い様子・・・。
では実際に、消費者の方は「トクホ」の「効果」について
どれだけ「期待」しているのでしょうか?
Q3でその「真意」が明らかになります!!
┌───────────────────────────────
│Q3、【Q1で「トクホ」を意味までわかる、
│ なんとなくわかると回答した方】
│ 「トクホ(特定保健用食品)」の効果について、
│ あなたのお気持ちにあてはまるものをお選びください
│
│
│ ◎摂取するだけで健康維持できる ・・・45人
│ ◎摂取しないよりは摂取した方がマシな程度のもの ・・・269人
│ ◎謳われているほどの効果は見られない ・・・87人
│ ◎摂取してみても変化はみられない ・・・67人
│ ◎その他 ・・・15人
└───────────────────────────────
一番多かったのが「摂取しないよりはマシな程度」という回答。
過剰な期待はしていないが「摂らないよりは・・・」と思っている
あたりが消費者の方の微妙な心理なのかもしれません。
では最後は「トクホ」の必要性について。
これからも「トクホ」ブームは続くのか??見逃せない質問です!
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│Q4、今後あなたの健康を考えた際に、「トクホ(特定保健用食品)」
│ の製品はあなたにとって必要なものだと思いますか?
│ <単一回答>
│
│ ◎必要なものだと思う ・・・62人
│ ◎まあ必要なものだと思う ・・・185人
│ ◎どちらとも言えない ・・・143人
│ ◎あまり必要なものとは思わない ・・・69人
│ ◎必要なものとは思わない ・・・41人
└───────────────────────────────
Q3の「摂らないよりは・・・」の心情を反映してか?
「必要なものだと思う」「まあ必要なものだと思う」と
答えた方は約半数近く!
「必要とは思わない」と言ったネガティブな回答は20%程度に留まるなど
ヘルスケアには「トクホ」・・・と言った考えの方が多いようです。
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▽▲「トクホ」で標ぼうできるのは認められた「許可表示」▽▲
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「トクホコーラ」の誕生でより身近な存在となった「トクホ」。
では具体的にどのような標ぼうができるのか、
さっそく整理していきましょう。
「トクホ」とは「特定保健用食品」の通称。
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健康増進法第26条第1項の許可又は同法第29条第1項の承認を受けて、
食生活において特定の保健の目的で摂取をする者に対し、
その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をする食品
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と定義されており、
個々の製品ごとに消費者庁長官の許可を受け、
保健の効果(許可表示内容)を表示することのできる食品です。
ここからもわかるように「トクホ」の管轄は消費者庁。
表示については「薬事法」ではなく、
「健康増進法」のルールに従う必要があります。
「トクホ」は個々の製品ごとに承認を受けていることから
標ぼうできるのは『その商品に認められた許可表示内容』に
なります。
認められた許可表示を超え、「医薬品的な効能効果」などを
述べることは「健康増進法」の第32条の2で定められている
「誇大表示の禁止」
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何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の
表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で
定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、
又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない
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となり、違反した場合はペナルティが課せられることになります。
では実際にどんな標ぼうが不可となるのか??
消費者庁が平成23年6月29日に公表した
「容器包装の表示だけでなく広告を含め、
具体的に違反のおそれのある事例とその根拠を示した」
特定保健用食品の表示に関するQ&Aに明記してあります。
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虚偽・誇大表示となるおそれのある表示(例)
●許可された保健の用途を強調する表示
・許可表示の一部のみを表示する
「食後の中性脂肪の上昇を抑える」という許可表示の
食品について、「食後」という文言を削って、
「中性脂肪の上昇を抑える」という文言のみを表示したもの
・試験結果やグラフの使用
極端なトリミング(スケール調整等)や、
作為的なデータの抽出を行ったもの
・アンケートやモニター調査の結果の使用
許可された保健の用途を超えて、特定の疾病を示し、
予防・治癒効果があるような内容を記載したもの
●許可された内容と異なる摂取方法の表示
「食事とともに1日1本」という摂取方法が定められた食品
について、「1日1本をお好きな時間にお飲みください。」
と表示したもの
●許可を受けていない保健の用途の表示
「おなかの調子を整える」という許可表示の食品について、
許可を受けていない「食後の血糖値が高めの方へ」
と表示したもの
●特定保健用食品と誤認させる表示
特定保健用食品として消費者に認知度の高い
既存の食品と、商品名やデザイン、含有成分、
キャッチコピー等を類似させるなど
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とあります。
中でも注意が必要なのは「許可された保健の用途を強調する表示」。
こちらについては
「(財)日本健康・栄養食品協会トクホ広告自主基準」
に詳細が明記されているのでそちらをご紹介しながら
補足いたします。
まずは「許可表示」について。自主基準では
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1)広告文中で許可表示を使用する場合は、許可書に記載された
文言どおり正確に表示すること。
2)審査申請書に添付した表示見本に記載されたコピーは、
そのまま使用して差し支えない。
3)許可表示の一部を省略あるいは言い換えをしてコピーとして
使用する場合、内容が誤認されるおそれのないよう
留意すること。
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とありますが、特に気をつけなくてはいけない3)に
ついては具体的に
<例>本品は、◇◇◇の働きにより、糖の吸収を穏やか
にするので、食後の血糖値が気になる方に適しています。
という商品の場合。
○:糖の吸収を穏やかにする◇◇◇配合
○:食後の血糖値が気になる方に(◇◇◇配合)
×:食後の血糖値が高い方に
となっているので「著しく誤認」させるような「省略」は
控えましょう。
また、「許可表示以外の広告表現」については
一般的な栄養成分の情報、食感などの製品特徴等を広告する
場合は使用できますが、それらが許可表示と誤認されないよう
留意すること・・・とされています。
さらに「試験結果(グラフなど)」の取扱いについても
使用することはできますが、許可表示を受けた効果を示す
データを広告に使用する場合は、
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1)広告に使用するデータの出典(引用元資料)は以下の2要件を
満たすこと。
①審査申請書内の添付資料であること。
②学術誌に掲載されていること。
2)広告にデータを使用する際は、必ず、データの出典を
明記すること。
3)広告にデータを使用する場合は、試験条件、摂取期間、
対象者の属性等試験の概要を明記すること。
〈例〉
n数、年齢、性別、BMI(体脂肪関連のトクホの場合)、
血圧(血圧関連のトクホの場合)、
血糖値(血糖値関連のトクホの場合)等
4)データやグラフに説明や解説を付加することは、
消費者へのより分かりやすい伝達を目的としたものであっても、
内容を誇大解釈させたり、誤認させる可能性が高いので、
そのようなことがないよう、十分に配慮すること
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さらにデータなどの加工については
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①消費者に誤認を与えるような極端な軸のスケール変更や
トリミングを避ける。
②見やすさに配慮して、目盛単位の変更・エラーバーの削除・
線の太さの変更・色の変更等は差し支えない。
③消費者の理解を助けるために、グラフ内・その近くに
試験内容と結果の説明・時間経過を表す矢印・事実に基づく
解説を加えることは差し支えない。
④表からグラフへの変更・グラフの種類の変更
(棒グラフを折れ線グラフに変更する等)は差し支えない。
⑤層別解析の結果に男女で差がある等の場合は、
効果を大きく見せるために一方のみを取り上げる等はしないこと。
⑥試験内容に関係ない説明は記載しないこと。
⑦データの出典、試験の概要などについても、見やすく、
分かりやすくなるよう文字の大きさなどをよく考慮すること。
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とされ、瞬間的にグラフが出るTV広告などでは
番組内の生コマーシャル、番組的なインフォマーシャルなど、
グラフの内容をしっかり説明できるものについてはグラフ使用は
差し支えないが、15秒や30秒など瞬時に流れてしまうコマーシャル
での使用は控えるよう促しています。
この他に
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●複数商品の同時広告について
トクホとトクホではない一般食品を並べて広告する場合は、
トクホと一般食品の区別を明確にし、誤認されることがないよう
配慮すること。
<誤認を避けるための表現例>
○:一般食品の広告、商品写真の傍に
「…はトクホではありません」と表示する。
○:トクホと一般食品とを明確に区切る線、
あるいはトクホと一般食品とを上下に配置する等して分ける。
×:トクホと一般食品とを明確に区切る線などが無い状態で、
効果の表現が両製品の上部にかかるように表記されている。
●バランスの取れた食生活の普及を図る文言
製品の広告には、バランスの良い食事を啓発するために、
「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」
の文言を表示するように努めること。
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とある為、これらにも留意する必要があります。
ここまでが健康増進法などから見る「トクホ」のルールですが、
では過剰な効果標ぼうをした場合、「薬事法」では
ルール違反とはならないのでしょうか?
答えは×!
特定保健用食品はあくまでも「食品」である為、
「許可表示」を逸脱し『医薬品的な効能効果』の暗示となった場合は
「薬事法違反」となるので広告表現には重ねて注意が必要です。
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