消費者庁、脱毛エステ事業者に指示 適合性原則違反、学生らへ高額脱毛契約を強引に勧誘
消費者庁は5日、脱毛エステティックサービスを提供している㈱クリア(東京都渋谷区、勝沼潤社長)に対し、特定商取引法に基づき、法令遵守体制の整備などを求める指示処分を出したと発表した。同社は、顧客の知識や財産状況に照らして不適当と認められる勧誘行為、いわゆる「適合性の原則」に違反する行為を行っていた。
同社は、1カ月を超える期間にわたり5万円を超える対価で施術を提供する「特定継続的役務提供」を行っている。処分理由となったのは、少なくとも2025年1月から同年5月にかけて確認された不適切な勧誘行為。
例えば同社は、 月収10万円未満のアルバイト収入で生活する学生に対し、体験施術の当日に「今日決めきれない」、「親に相談したい」という拒絶を無視。従業員は「親には理解してもらえない」、「自分で判断するのが一般的」などと告げ、約50万円の契約を締結させた。
また、月収約5万円のアルバイト収入しかない学生が、無料カウンセリングで「母親に相談したい」と伝えた際、「相談して諦めてしまった人がたくさんいる」、「この金額は今日限り」などと即決を迫り、約40万円の契約を結ばせたとしている。
同庁は、これらの行為が「顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘」に該当し、消費者の利益を害するおそれがあると認定した。
参照元:WellnessDailyNews(2026/3/9より)
Contents
ニュースの概要
消費者庁によると、㈱クリアは少なくとも2025年1月から5月にかけて、収入が少ない学生に対して高額な脱毛契約を勧誘していました。
具体的には、
- 月収10万円未満のアルバイト収入で生活する学生に対し、約50万円の契約を締結させた
- 月収約5万円のアルバイト収入しかない学生に対し、約40万円の契約を締結させた
とされています。
いずれのケースでも、消費者側が「今日決めきれない」「親に相談したい」と意思表示しているにもかかわらず、
- 親には理解してもらえない
- 自分で判断するのが一般的
- この金額は今日限り
- 相談して諦めてしまった人がたくさんいる
などの発言により、その場での契約を促していたとされています。
特商法上問題となった勧誘行為とは
今回問題となったのは、特定商取引法において禁止されている「顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘」です。
事業者は、消費者の知識や経験、収入状況などを踏まえたうえで勧誘を行う必要があります。特に、契約内容や金額が消費者の状況に照らして過大である場合や、十分な検討機会を与えないまま契約を迫る場合には、消費者利益を害するおそれがあるとして問題となる可能性があります。
なぜ問題なのか
1.消費者の合理的な判断を妨げているおそれ
消費者が「親に相談したい」と伝えていることは、契約内容を慎重に検討したい意思の表れです。
しかし、事業者が「今日だけの価格」「今決めないと損をする」といった心理的圧力をかけることで、冷静な判断ができなくなる可能性があります。
特に若年層は契約経験が少なく、営業担当者の説明を過度に信頼してしまうケースも少なくありません。
2. 消費者の収入状況との不均衡リスク
月収数万円程度の学生に対し、数十万円規模の契約を勧めることは、支払能力とのバランスを欠く可能性があります。
その結果、
- ローン負担の増加
- クレジット契約による債務問題
- 中途解約トラブル
などにつながるおそれがあります。
消費者庁は、このような状況が消費者利益を害する可能性が高いと判断しました。
3. 相談件数から見える実態
PIO-NETに寄せられた㈱クリアに関する相談は、2023年4月から2026年1月までの間で1,349件に上っています。
契約者の平均年齢は26.9歳で、
- 20代:55.2%
- 10代:16.3%
となっており、20代以下が全体の7割以上を占めています。
このことから、若年層を中心に高額契約に関するトラブルが広く発生していたことがうかがえます。
行政処分後に求められる再発防止策
今回の指示処分により、㈱クリアには
- 違反行為の原因調査
- 法令遵守体制の整備
- 再発防止策の策定
- 社内への周知徹底
が求められています。
また、消費者庁は指示に従わない場合、さらに重い行政処分や罰則の適用を検討するとしています。
近年は若年層を対象とした美容サービスやサブスクリプション契約などに対する監視が強化されており、今回の事例は業界全体への警鐘ともいえるでしょう。
事業者が注意すべきポイント
1.消費者の収入状況等を十分に考慮する
高額な継続契約を提案する場合は、消費者の収入や生活状況を踏まえ、無理のない契約内容であるかを慎重に判断する必要があります。
特に、契約金額が高額である場合には、その消費者にとって過度な負担となるおそれがないかを慎重に検討する必要があります。今回の事案でも、消費者庁は収入状況や契約金額、勧誘態様などを総合的に考慮し、不適当な勧誘に該当すると判断しました。
2. 即決を迫る営業手法を見直す
「今日限り」「今しか契約できない」といった表現は、消費者に強い心理的プレッシャーを与えます。
消費者庁は、こうした勧誘態様を総合的に評価した結果、消費者の利益を害するおそれがあると判断しています。そのため、期間限定の価格訴求を行う場合であっても、消費者が十分に検討できる環境を確保し、過度な心理的圧力を与えないよう注意が必要です。
3.家族や第三者への相談を妨げない
消費者が家族や友人への相談を希望した場合には、それを尊重しなければなりません。
相談を思いとどまらせたり、相談相手を否定するような説明を行ったりすることは、消費者の適切な意思決定を阻害する行為として問題視される可能性があります。
4.従業員教育とコンプライアンス体制を強化する
現場の営業担当者が法令を正しく理解していなければ、不適切な勧誘が発生するリスクは高まります。
そのため、
- 特定商取引法の研修
- 勧誘トークのチェック
- 管理者によるモニタリング
- 苦情分析と改善活動
などを継続的に実施し、法令遵守を徹底する必要があります。
今回の指示処分により、㈱クリアには
まとめ
今回の事案では、収入が限られた学生に対して高額な脱毛契約を勧誘し、家族への相談希望を無視して契約を急がせたことなどが、特定商取引法上の不適当な勧誘として問題視されました。
事業者にとって重要なのは、単に契約を獲得することではなく、消費者が十分に理解し、無理なく利用できる契約であるかを確認することです。
特に若年層や収入の少ない消費者を対象とする事業者は、営業手法や社内体制を改めて見直し、消費者保護の観点を踏まえた適正な勧誘を行うことが求められています。
このニュースから学んでおきたい知識




消費者庁は2026年3月、脱毛エステティックサービスを提供する㈱クリアに対し、特定商取引法に基づく指示処分を行いました。
問題となったのは、学生など収入が限られた消費者に対して、高額な脱毛契約を強く勧誘し、契約を締結させていた行為です。消費者庁はこれらの行為について、「顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘」に該当すると認定しました。
本件は、エステ業界に限らず、高額な継続契約を取り扱う事業者全般にとって重要な事例といえます。