神戸のサプリ会社がステマか SNS投稿巡り措置命令、消費者庁
イメージモデルらにサプリメント商品を無償提供して依頼したSNSへの投稿を巡り、依頼行為を明らかにしない形で自社のサイトなどに転載したのは景品表示法違反のステルスマーケティング(ステマ)に当たるとして、消費者庁は29日、健康食品販売会社「高光製薬」(神戸市)に再発防止を求める措置命令を出した。
高光製薬は「指摘を真摯に受け止め、再発防止に努める」とするコメントを出した。
対象商品は「ノビルン」と「ノビルンC」。公正取引委員会近畿中国四国事務所によると、モデルらが商品を紹介したSNS投稿を巡り、同社は2025年4〜12月、依頼された投稿だと分かる部分以外を切り出して自社サイトなどに転載し「SNSで大人気!」などと表示した。モデルらのSNS投稿では依頼について触れられており、公取委は同社による転載表示のみをステマと認定した。
参照元:日本経済新聞(2026/6/29より)
Contents
今回の措置命令の概要
対象となったのは、高光製薬が販売する「ノビルン」と「ノビルンC」の2商品です。
消費者庁によると、高光製薬は商品の販売促進活動のために第三者を募集し、応募した第三者へ商品を無償で提供したうえで、商品についてSNSへ投稿するよう依頼していました。
さらに、第三者が投稿したSNS表示の画像部分を抜粋し、「SNSでも大人気!」などの文言とともに、自社の公式サイトや楽天市場、Yahoo!ショッピング内の販売ページに掲載していました。
実際に措置命令資料の掲載例を見ると、商品を持った人物の写真や利用者のコメントなどが多数並び、一般の利用者から自然に寄せられたSNS投稿が紹介されているように見える構成となっています。
消費者庁は、高光製薬が投稿を依頼し、その画像を自社の販売ページに掲載していたことなどから、これらを高光製薬が自己の商品について行う「事業者の表示」と認定しました。
問題点① 依頼したSNS投稿であることが明らかにされていなかった
今回最も重要なのが、第三者の自主的な投稿のように見えていた点です。
ステルスマーケティング規制では、事業者が表示内容の決定に関与している場合、その表示が広告であることを一般消費者が判別できる必要があります。
今回、高光製薬は商品を無償提供し、第三者へSNS投稿を依頼していました。
しかし、自社サイト等に掲載した画像については、その投稿が高光製薬の依頼によるものであることを明らかにしていませんでした。
消費者庁は、表示内容全体から見ても事業者による表示であることが明瞭とはいえず、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難だったと判断しています。
問題点② 第三者投稿を転載しても「第三者の表示」とは限らない
今回の事例で特に注意したいのが、もともとの画像が第三者によるSNS投稿だったとしても、それだけで事業者の表示ではなくなるわけではないという点です。
高光製薬は、第三者の投稿画像を自社サイト等へ抜粋して掲載していました。
消費者庁は、高光製薬が商品の無償提供や投稿依頼を行ったうえで、その投稿画像を自社の販売ページに掲載するなど、表示内容の決定に関与していたことから、事業者自身の表示と認定しています。
つまり、もともと第三者が投稿した内容であっても、商品の提供や投稿依頼、画像の抜粋・転載などに事業者が関与していれば、景品表示法上の「事業者の表示」と判断される可能性があります。
問題点③「SNSで人気」と訴求する際は投稿の背景にも注意
今回の販売ページでは、「SNSでも大人気!」といった表現とともに、多数の人物が商品を持っている画像などが掲載されていました。
たとえば、SNS上の投稿では「PR」などの表示によって広告であることが分かる状態だったとしても、その画像だけを切り抜いて自社サイトへ転載すると、広告であることが分からなくなる可能性があります。
実際には掲載された投稿は、事業者が商品を無償提供し、SNSへの投稿を依頼したことによって作成されたものでした。
その関係性を明らかにしないまま口コミやSNS上の人気を訴求すると、商品に対する第三者の自主的な評価であるかのような印象を与えるおそれがあります。
措置命令で求められた内容
消費者庁は高光製薬に対して、今回の表示が景品表示法に違反するものであることを一般消費者へ周知徹底することに加え、再発防止策を講じ、役員および従業員へ周知することを命じました。
さらに、今後同様の表示を行わないことや、実施した周知・再発防止措置について、速やかに文書で消費者庁長官へ報告することも求めています。
事業者が注意すべきポイント
1.商品提供と投稿依頼をセットで行う場合は広告であることを意識する
商品を無料で提供したうえでSNSへの投稿を依頼する場合、投稿内容に事業者がどの程度関与しているかによって、景品表示法上の「事業者の表示」と判断される可能性があります。
「投稿する内容は自由だから」「インフルエンサーではなく一般のモニターだから」という理由だけで、広告表示が不要になるとは限りません。事業者は、商品提供から投稿依頼までの一連の関係を踏まえて判断することが重要です。
2.SNS投稿を自社サイトへ転載する際も広告表示を確認する
SNS上の投稿に「PR」などの表示が適切に付されていたとしても、その画像だけを切り抜いて自社サイトへ転載した結果、広告であることが分からなくなるケースも考えられます。
口コミやSNS投稿をLP、ECサイト、バナーなどへ二次利用する場合は、転載後の表示全体を見たときにも、事業者の広告であることが明瞭かを改めて確認する必要があります。
3.「お客様の声」「SNSで話題」の出所を確認する
利用者の写真や口コミは、商品の人気や信頼性を伝える強い訴求になります。
一方、その投稿がモニター募集や商品提供、謝礼などをきっかけに作られたものであれば、完全に自主的な口コミとは性質が異なります。
「SNSで人気」「リアルな声」などと紹介する際には、投稿がどのような経緯で作成されたものなのかを社内で確認できる管理体制を整えておくことが重要です。
4.外部事業者を利用する場合も表示内容を確認する
SNS施策では、広告代理店やキャスティング会社、モニター募集サービスなど外部事業者を利用するケースも少なくありません。
しかし、最終的に自社商品の販売促進に用いる表示については、事業者自身が景品表示法上のリスクを確認する必要があります。
投稿依頼の条件、商品の提供方法、投稿内容への指示、PR表記のルール、二次利用の方法などを事前に整理し、広告施策全体を管理できる仕組みを作ることが重要です。
5.SNS投稿の「切り抜き」や「再編集」に注意する
今回の事例では、第三者によるSNS投稿の画像部分を抜粋して自社サイト等に掲載したこともポイントとなっています。
元の投稿では広告であることが分かる表示があっても、画像を切り抜いたりデザインを変更したりすることで、その情報が失われる可能性があります。
二次利用する際には、元投稿ではなく、実際に消費者へ表示される完成版の広告を基準にステマ規制への適合性を確認することが必要です。
まとめ
今回の措置命令では、高光製薬が第三者へ商品を無償提供してSNS投稿を依頼し、その投稿画像を自社サイトやECモールの販売ページへ掲載した行為について、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難だったとして、ステルスマーケティング告示違反が認定されました。
SNSや口コミを活用した広告では、「誰が投稿したか」だけでなく、誰がその表示の作成に関与したのか、消費者から広告であることが分かる状態になっているかが重要です。
特に、モニター施策や商品提供キャンペーンで獲得した投稿を、自社サイトやLPへ二次利用している事業者は注意が必要です。
第三者の投稿だから安心と考えるのではなく、投稿の依頼から広告への転載までを一連の広告施策として管理することが、ステルスマーケティング規制への対応として重要になるでしょう。
このニュースから学んでおきたい知識




2026年6月29日、消費者庁は、高光製薬株式会社が販売する食品「ノビルン」および「ノビルンC」の表示について、景品表示法のステルスマーケティング告示に違反したとして、同社に措置命令を行いました。
今回問題となったのは、第三者によるSNS投稿そのものだけではありません。
高光製薬は商品の販売促進のために第三者を募集し、商品を無償提供したうえでSNSへの投稿を依頼。その投稿画像の一部を抜粋し、「SNSでも大人気!」などの表示とともに、自社サイトや楽天市場、Yahoo!ショッピング内の販売ページに掲載していました。
しかし、掲載された画像からは、そのSNS投稿が事業者の依頼によって行われたものであることが明らかにされていませんでした。
今回は、どのような点がステルスマーケティング表示として問題となったのか、事業者がSNS投稿や口コミを広告へ活用する際の注意点を解説します。