健康食品で「花粉症」は訴求できるのか
花粉症は、医学的に認められたアレルギー性疾患であり、「くしゃみ」「鼻水」「目のかゆみ」などの症状を伴うれっきとした病気です。このため、広告において「花粉症に効く」といった表現を使うと、それは医薬品的な効能効果を標ぼうすることになります。
日本では、薬機法(旧薬事法)により、健康食品が医薬品のような効能効果を示すことは厳しく禁じられています。とくに「花粉症」という具体的な疾患名を使った表現は、健康食品の広告では完全にNGです。
実際に、消費者庁が行っているインターネット広告の監視でも、「花粉症」はチェック対象のキーワードの一つ。検索広告で使用されているだけでも警告や行政指導の対象となる可能性があります。
つまり、たとえ実際に花粉症の症状を和らげるようなユーザーの声があっても、「花粉症によい」「対策に」などの表現は一切使えないのが現状です。広告においては、「何を言うか」だけでなく、「何を言ってはいけないか」の理解が非常に重要です。
「花粉症」を連想させる表現もNG
注意すべきは、「花粉症」は使えなくても「花粉」であれば良い、という単純な話ではない点です。たとえば、「プロポリスは花粉を含んでいます」といった成分としての事実を伝える表現であれば問題ありませんが、「花粉が気になる季節に」「花粉に負けない毎日を」などのコピーは、花粉=花粉症を暗示しているとみなされる可能性があります。
現在の社会では、「花粉」と聞けばほとんどの人が花粉症を連想するのが自然です。そのため、たとえ「花粉症」という直接的な表現を避けていたとしても、花粉を想起させる言葉とともに「快適」「スッキリ」などの体感ワードを使うと、結果的に医薬品的な効能効果を訴えていると判断されかねません。
広告表現においては、単語単体ではなく文脈全体で何を訴えているかが問われます。ギリギリの言い換えや曖昧な表現は、かえってリスクを高める可能性があるため、慎重な設計が求められます。
【言い換え表現】擬態語で乗り切るテクニック
「花粉症」「花粉」といった言葉が使えない中で、多くの健康食品広告が活用しているのが、擬態語(オノマトペ)を用いた表現です。「ムズムズ」「グズグズ」「スーッと」など、直接的な効能を示さず、消費者に感覚的な印象を与える方法として広く使われています。
たとえば、
「春のムズムズにアクティブな毎日を」
「グズグズする季節を快適に」
といった表現は、花粉症を明示せずに、何となく体調が乱れやすい季節を連想させる曖昧さがポイントです。擬態語は医学的な症状ではないため、医薬品的効能効果とは直結しにくいというメリットがあります。
ただし、文脈によっては誤解を生む恐れもあります。「ムズムズ」=くしゃみ、「グズグズ」=鼻づまり、と連想されるような文脈になると、結局は花粉症を暗示していると判断される可能性も出てきます。
したがって、擬態語を使用する場合は、その意味を季節の雰囲気や気分のゆらぎなどにうまく落とし込み、特定の症状を暗示しないよう構成することが重要です。
広告全体の“印象”で判断される
広告表現の可否は、個々の言葉だけでなく、広告全体から受け取られる印象によって判断されます。たとえ「花粉症」や「くしゃみ」「鼻水」などのNGワードを使っていなくても、画像・レイアウト・文脈などの組み合わせによって、結果的に医薬品的効能を訴えていると見なされるケースがあります。
たとえば、「ムズムズする季節に」「爽やかな毎日をサポート」といった曖昧な表現でも、横にマスク姿の人物や鼻をかむイラストが配置されていれば、「これは花粉症対策を謳っている」と解釈されかねません。こうした場合、行政機関から広告の差し止めや指導が入る可能性があります。
一方で、同じ「ムズムズ」という言葉を使っても、「春は気分もムズムズ。外に出かけたくなる季節ですね」といったポジティブな気持ちの動きとして表現すれば、症状を連想させるリスクは下がります。
このように、重要なのは一部の言い換えテクニックに頼らず、広告全体として“どう受け取られるか”を設計する視点です。審査を通すためには、言葉・ビジュアル・構成すべてを俯瞰し、誤認リスクを徹底的に排除する必要があります。
まとめ
花粉症に悩む方が多い今、健康食品を通じて「何か役に立てないか」と考えるのは自然なことです。しかし、広告表現においては「花粉症に効く」といった直接的な訴求はできません。たとえ意図的に言葉をぼかしていても、広告全体から効能効果が想起されれば、薬機法や景品表示法に抵触するおそれがあります。
そのためには、「何を伝えるか」と同じくらい「どう伝えるか」「何を連想させないか」が重要です。擬態語を使うテクニックや、季節感を活かした表現を工夫することは可能ですが、常に広告全体の印象を意識しなければなりません。
単語の置き換えだけでなく、文脈、ビジュアル、トーンすべてを整えた“誤認させない表現”が、結果的に長く使える広告を作る鍵となります。
法令を正しく理解しながら、魅力的な訴求を実現する。そのための知識と工夫が、これからの広告には求められています。
参照元:消費者庁
この記事から学んでおきたい関連知識

くしゃみ、鼻みず、目のかゆみなど、花粉症に悩む人は年々増加しています。薬に頼らず、健康食品で対策したいと考える方も多い中、「花粉症に効く」といった表現は広告では使えないことをご存じでしょうか?
健康食品における広告表現は、薬機法や景品表示法などの規制があり、内容によっては違反となるリスクもあります。本記事では、花粉症シーズンに向けた広告表現の注意点と、訴求の工夫についてわかりやすく解説します。
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