消費者庁は28日、景品表示法第31条第3項の規定に基づく確約計画の認定を行った。今回の認定は、2024年10月1日に改正景品表示法が施行されて以降、2件目の事例。
確約計画とは、昨年10月1日に施行された改正景品表示法に導入された確約手続において、景品表示法の違反被疑行為の概要・法令条項等の通知(確約手続通知)を受けた事業者が、通知後60日以内に自主的に作成し申請するというもの。確約計画の認定は、措置命令同様、景品表示法に基づく行政処分ではあるが、景品表示法の規定に違反することを認定したものではない。
口コミ欄への「星5」投稿と二重価格表示
今回確約計画が認定された事業者は、㈱LAVA International。同社は、「フェイシャル専門サロンDanjoBi」という店舗、「フェイシャル専門サロンMUQU」という店舗で施術サービスを一般消費者に提供。その際、ウェブサイト「HOT PEPPER Beauty」に掲載された各店舗のページ内の「口コミ」欄に、「★★★★★」(星5)の口コミを投稿することを条件に次回店舗利用時に支払う施術料金から500円を割り引くことを伝え、星5の口コミを表示していた。表示していたのは、2024年2月頃から25年6月23日までの期間。また同社の従業員による口コミ表示欄への星5の口コミ表示もあったという。表示していたのは23年10月1日から25年2月13日までの期間とされる。さらに同社は、21年1月1日から24年11月21日までの期間、「HOT PEPPER Beauty」に掲載された各店舗のページ内の「クーポンメニュー」で提供するクーポンにおいて、実際の提供価格とそれを上回る通常価格を併記。実際の提供価格は、通常価格と比較して安いかのように表示していた。しかし、通常価格としていた価格は、最近相当期間にわたり提供された実績のないものだったという。
同庁が25年8月4日、同社に対して同法第30条の規定に基づき、確約手続通知を行ったところ、同社から同法第31条第1項の規定に基づき、確約計画の認定の申請があった。
同庁は、当該確約計画が違反被疑行為による影響を是正するために十分であり(措置内容の十分性)、かつ、その内容が確実に実施されると見込まれるものであると認め(措置実施の確実性)、28日、同条第3項の規定に基づき、当該確約計画を認定した。認定した確約計画の概要によると、同社は、①同違反被疑行為を行わない旨を取締役全員の周知徹底すること、②同行為の内容について一般消費者に周知徹底すること、③同行為及び同種の行為が再び行われることを防止するための各種措置を講じること、④同行為を行っていた期間に対象のクーポンを利用した一般消費者に対し、支払われた料金の一部を返金すること、⑤①~④の措置の履行状況を消費者庁に報告することが求められている。
また、同社は同日、ホームページに「消費者庁から認定を受けた影響是正措置計画に基づくお知らせ」を掲載。「今回の消費者庁によるご指摘を厳粛に受け止め、今後、広告表示に関する役員や従業員への教育や社内チェック体制の強化をより一層徹底し、再発防止に取り組んでまいる所存です」とコメントした。
参照元:WellnessDailyNews(2025/8/29より)
今回のニュースの問題点(法令・指針の観点)
条件付きの「星5」要求=ステマ規制の対象
口コミに評価内容(星5等)を条件として割引等の対価を結び付けると、事業者が表示内容を決定したことになり、「事業者の表示」である旨の明示が必要。明示がない場合はステルスマーケティング告示違反となり得ます。
従業員による口コミ=利害関係の明示が要件
従業員投稿は、利害関係のある者による推奨表示であり、広告であることの明示が求められます(明示なしは不当表示のおそれ)。
二重価格表示=「最近相当期間」の実績が必要
「通常価格」と比較して安いと示すには、比較対照価格が最近相当期間にわたって販売・提供された実績であることが条件。実績がない価格を並べると有利誤認のリスクが高まります。
確約手続の位置づけ
確約計画は通知後60日以内に申請し、「措置内容の十分性」と「実施の確実性」を満たすと認定。認定後は当該行為に措置命令は適用されませんが、履行されなければ取消の可能性があります。
事業者が今後注意すべき点
① 口コミ施策で評価(例:星5)を条件にしないこと。
評価内容を指定・誘導すると事業者の表示となり、広告である旨の明示が不可欠です。インセンティブを付す場合は内容指示をしない設計に切り替えましょう。
② 従業員・関係者の投稿は「広告である」ことを明確に表示する。
社内・代理店・インフルエンサー等、利害関係者の推奨には明示が必要で、匿名や中立を装う投稿はステマ規制違反のおそれがあります。
③ 「通常価格」や「割引前価格」は“最近相当期間”の実績に基づく。
比較対照価格は客観的な提供実績で裏づけ、期間・価格のエビデンスを保存し、必要に応じて根拠を説明できる体制を整えます。
④ 「期間限定」「今だけ」表示は、実際の期間・条件を具体的に記載する。
恒常的に続く値引きを期間限定と装う表示は有利誤認の典型で、開始・終了時期を明確にし、実態と乖離させないことが重要です。
⑤ 出稿先プラットフォームの口コミ規約を遵守する。
たとえばHOT PEPPER Beautyでは、実体験に基づく投稿や禁止行為が定められています。自店で投稿を操作・代行させるような運用はしないようにする必要があります。口コミの掟 / HOT PEPPERbeauty
⑥ 確約手続は“最終手段”ではなく“早期是正の選択肢”。
認定=違反認定ではない一方、計画の履行義務と公表、取消リスクが伴います。迅速な是正・被害回復・再発防止を前提に、エスカレーション前の自律的対応が求められます。
⑦ 返金等の被害回復は、対象の特定・告知・申請導線まで設計する。
該当期間・対象者・返金額の基準を明確化し、周知方法と申請フロー、実施期限を定め、実施状況を記録・報告できる仕組みを整えます(今回の確約でも返金が措置に含まれました)。
最後に
まとめると以下となります。
内部統制:広告・価格表示の法務・品質チェックラインを整備し、証拠管理(スクショ・履歴・価格台帳)を標準化。
教育:現場・FC・代理店まで含めたステマ規制/二重価格の定期研修を実施。
監査:第三者レビューやプラットフォーム運用監査で口コミ操作の芽を摘む。
迅速対応:疑義発生時は自主修正→告知→被害回復→再発防止をワンセットで。
今回の事例は、レビュー誘導と二重価格という“やりがちな落とし穴”の典型です。透明性と実績に基づく表示、そして明示すべきものを明示する――この基本を外さない運用を意識すると良いでしょう。
このニュースから学んでおきたい知識
消費者庁は2025年8月28日、LAVA Internationalのフェイシャルサロン(DanjoBi、MUQU)に関する「確約計画」を認定しました。
認定の対象となった表示は、
・「星5の口コミ投稿を条件に500円割引」とする口コミ誘導
・従業員による星5口コミ投稿
・実績のない「通常価格」を併記した二重価格表示
です。
期間は、口コミ誘導が2024年2月頃~2025年6月23日、
従業員口コミが2023年10月1日~2025年2月13日、
二重価格が2021年1月1日~2024年11月21日とされています。
確約計画には再発防止、周知、返金、実施報告等が含まれます。
なお、確約計画の認定は「違反の認定」ではなく、計画が十分かつ確実に実施されると見込まれる場合に行われ、当該行為について措置命令等の適用が除外される効果(法28条)があります。
今回の認定は、改正景品表示法(2024年10月1日施行)後の2件目となります。