薬機法・景表法ニュース

防カビ剤表示に措置命令 P&G事例に見る表示の落とし穴と企業が守るべきルール【2025年8月4日】

ファブリーズ「浴室防カビ」根拠無し P&Gジャパンに措置命令

 防カビ剤と称する商品を浴室に置くだけで、カビの繁殖を防げると誤認させる広告表示をしていたとして、消費者庁は1日、P&Gジャパン(神戸市)に対し、景品表示法違反(優良誤認)で再発防止策を講じることなどを求める措置命令を出した。

 消費者庁によると、同社は2022年4月から23年7月まで「ファブリーズ お風呂用防カビ剤」の商品パッケージに「お風呂に置くだけで黒カビを防ぐ」などと表示。イラストや写真などもつけ、浴室全体のカビの繁殖を防ぐ効果があるかのような表示をしていた。表示通りの効果があるかどうか、消費者庁は同社から提出された資料を調べたが、合理的な根拠を示すものではなかったとして違反と認定した。同社の資料で、実際の浴室とは換気状況が異なる環境で効果の実証実験をしていた点などを踏まえたという。

 同社は消費者庁が調査に入った後、23年7月までに問題となった表示をやめた。その後、同じようなデザインの風呂用の消臭剤を販売している。商品のパッケージには「カビ臭を防ぐ」などと表示しているが、消費者庁は、この製品の効果の根拠については、現時点では調査していないという。

 同社によると、消費者庁から指摘を受けた商品の販売を開始したのは22年4月。措置命令について、ウェブサイトで「厳粛に受け止め、内容を精査したうえ、対応について慎重に検討していくと同時に、引き続き製品における適正な表示に努めてまいります」とのコメントを出した。

参照元:朝日新聞オンライン(2025年8月1日より)

私たちが日常的に利用する生活用品には、「置くだけ」「使うだけで効果あり」といった便利さを強調する広告が多く見られます。しかし、こうした表現が実際の効果と大きく乖離していた場合、消費者に誤解を与える「不当表示」として法律違反に問われることがあります。

2025年8月1日、消費者庁は大手日用品メーカーP&Gジャパンに対し、同社が販売していた「ファブリーズ お風呂用防カビ剤」の広告表示が景品表示法に違反するとして措置命令を出しました。表示されていた「置くだけで黒カビを防ぐ」といった文言が、科学的根拠を欠いていると認定されためです。

本記事では、このニュースをもとに、問題となった表示の内容、法律違反とされた理由、そして企業が今後注意すべき広告表示のポイントについて解説していきます。

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P&Gに対する措置命令の内容とは?

2025年8月1日、消費者庁はP&Gジャパン(神戸市)に対し、景品表示法に基づく措置命令を出しました。対象となったのは、同社が2022年4月から2023年7月まで販売していた「ファブリーズ お風呂用防カビ剤」です。

問題となった表示内容
この商品パッケージには、次のような文言とデザインが使用されていました
「お風呂に置くだけで黒カビを防ぐ」
・浴室内全体に効果が及ぶかのようなイラストや写真

一見すると、ただ浴室に置くだけでカビの発生が防げるような印象を与える表示です。
こうした表現は、日々忙しく掃除に時間をかけられない消費者にとって非常に魅力的に映ります。

消費者庁の調査結果と指摘

消費者庁は、P&Gジャパンが提出した実証資料を精査した結果、次の点で表示内容に問題があると判断しました。

・表示された効果を裏付ける合理的な根拠が認められなかった
・効果検証の実験環境が、実際の浴室とは異なり、換気条件などが現実的でなかった
 つまり、「表示通りの効果があるとは言えない」という結論に達したのです。

このように、実際には科学的根拠に乏しいにも関わらず、消費者にとって有効であるかのように表示していたことが、景品表示法における「優良誤認表示」に該当するとされました。


措置命令の内容と企業の対応
措置命令の中で、P&Gに対して求められたのは次の3点です:
 ・不当表示があったことを消費者に周知徹底すること
 ・同様の表示が再発しないよう、再発防止策を策定・実施すること
 ・今後、同様の優良誤認表示を行わないこと

景品表示法における「優良誤認表示」とは?

消費者庁が今回のP&Gに対して措置命令を出した根拠は、景品表示法違反の「優良誤認表示」に該当したためです。ここでは、「優良誤認表示」とは何か、その定義と判断基準を解説し、今回のケースがなぜ違反とされたのかを掘り下げていきます。

優良誤認表示の具体的な定義
「優良誤認表示」とは、以下のような表示を指します:
実際よりも著しく性能・効果・品質などが優れているかのように見せかける表現

重要なのは、「意図的にウソをついているかどうか」ではなく、消費者がその表示によって誤った認識を持ってしまうかどうかという点です。
たとえば、以下のような表示が優良誤認に該当することがあります
・科学的根拠がないのに「99%除菌」と表示
・試験環境が極端に理想的だったにもかかわらず、あたかも家庭で同じ効果があるかのように表示
・実際には一部の条件下でしか効果がないのに、全面的に効くと印象づける表現を使う

P&Gの表示のどこが「優良誤認」に該当したのか?
今回のP&Gの表示における問題点は、以下の通りです。

・「置くだけで黒カビを防ぐ」との表現は、非常に強い効果を示唆するもの
・しかし、その根拠とされた実験は、実際の家庭浴室とは異なる環境(換気が不十分など)
 で行われていた
・消費者庁はこれを、「実際の使用環境で期待される効果とは乖離しており、
 合理的な裏付けとは言えない」と判断

つまり、「表示されている内容を信じた消費者が、実際にはその効果を得られない可能性がある」ことから、誤認を招く不当な広告表示=優良誤認表示と認定されたのです。

「合理的根拠資料」の重要性
景品表示法では、商品の性能や効果をうたう場合、企業はそれを裏付けるための合理的な根拠資料を持っていなければなりません。

・客観的な試験結果
・第三者機関による評価
・実使用環境に即した検証方法

などが求められ、消費者庁の求めに応じて速やかに提出できる体制を整えておくことが必要です。

企業が「効果がある」と表示する場合は、その効果が一般的な使用環境でも再現されることを証明しなければ、表示自体が違法となる可能性があるのです。

事業者が今後注意すべき点

今回のP&Gジャパンへの措置命令は、消費者の誤認を招く表示がいかに大きなリスクを伴うかを示す象徴的な事例です。では、同様の問題を回避するために、事業者は具体的にどのような点に注意すべきなのでしょうか。以下に、広告表示における基本的なチェックポイントと運用上の注意点をまとめます。

● 効果や品質をうたう表示には「合理的根拠」が必須
商品が持つ機能や効果を表示する場合は、その内容が科学的に裏付けられている必要があります。ただの自社データや社内実験では不十分であり、次のような資料が必要です

・客観的な試験結果(第三者機関の試験など)
・実使用環境に即した検証結果
・複数回の再現性を持つデータ

これらは、消費者庁からの資料提出要請があった際に、速やかに開示できることが求められます。開示できなければ、「合理的根拠がない」として違反認定されるリスクがあります。

● 試験環境と実生活環境の乖離に注意
多くの誤認表示は、実験や検証が理想的すぎる条件下で行われていたことが原因です。例えば

・密閉された空間での効果検証
・通常の家庭とは異なる湿度・温度条件
・使用頻度や設置方法が一般的でない場合

製品が実際に使われる現場で同等の効果が得られるかどうか、現実に近いシナリオでの試験が不可欠です。

● パッケージ表現やビジュアルにも配慮する
広告表示というと「言葉(コピー)」ばかりに注意が向きがちですが、実際にはパッケージデザインや写真、イラストの印象も消費者の判断に大きく影響します。
以下のような点をチェックすべきです:

・写真やイラストが効果を誇張していないか
・消費者が「商品全体に効果がある」と誤解しないか
・色使いや配置が、過度な期待を抱かせていないか

可能であれば、第三者の視点で「消費者がどう受け取るか」を検証する仕組みも導入すべきです。

● 表示に関する社内チェック体制の整備
法令遵守のためには、広告やパッケージに関する社内のチェック体制の整備が不可欠です。
特に以下のような取り組みが効果的です

・マーケティング、商品企画、法務部門による複数チェック体制
・表示ガイドラインの作成と社員教育の徹底
・新商品発売時・リニューアル時の表示点検フローの確立

こうしたプロセスを業務フローの一部として定着させることが、長期的な法令リスクの回避につながります。

● 表示ミスが発覚した場合の初動対応
万が一、不適切な表示が発覚した場合には、企業として誠実で迅速な対応が求められます。

・表示の即時修正・回収の判断
・消費者への説明と謝罪
・関係当局への報告と対応方針の提示

初動対応を誤ると、企業の信頼を損ない、メディアやSNSでの炎上リスクも高まります。あらかじめ対応マニュアルを整備しておくことが危機管理上の重要施策です。

消費者との信頼関係を築くためにも、事業者は自社の広告活動を定期的に見直し、法令遵守と透明性のある情報発信を徹底することが求められます。

おわりに

今回のP&Gジャパンへの措置命令は、商品表示が消費者に与える影響の大きさ、そしてその責任の重さを改めて浮き彫りにしました。

私たちが日々目にする広告やパッケージの言葉。その一つひとつが、企業の信頼性を形づくる「顔」であることを忘れてはなりません。

これからの商品開発・販売においては、「魅力的な表現」よりも「誠実な表現」を優先する姿勢が、結果的に企業の価値を高め、消費者からの支持を得る最も確かな道であることを、改めて認識すべき時期に来ているのではないでしょうか。

このニュースから学んでおきたい知識

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