薬機法広告ラボ

化粧品広告の炎上リスクとは?ルッキズムや表現トラブルを避けるためのポイント

SNSの発達により、広告の影響力がこれまで以上に大きくなった現代。

特に化粧品業界では、「見た目」や「美しさ」といったテーマが人々の価値観に直結するため、広告表現が想像以上にセンシティブになっています。

これまでは、化粧品広告といえば薬機法(旧薬事法)や景品表示法といった法令遵守が重視されてきました。もちろん、それは今も重要です。しかし、近年ではそれに加えて「社会的配慮」、つまり「炎上しない表現」を意識する必要性が高まっています。

特にSNSでは、たった一言のキャッチコピーが「差別的」「古い価値観」と見なされ、企業ブランドに大きなダメージを与えることも珍しくありません。その背景には、多様性や個性の尊重といった社会的意識の変化があり、企業が時代の空気を読み取る力を問われているとも言えます。

本記事では、薬機法などのコンプライアンス視点から一歩踏み込み、「配慮不足」が引き起こす広告炎上のリスクについて、過去の事例とともに解説していきます。あわせて、炎上を避けるための表現改善のヒントもご紹介しますので、広告・PR・商品企画などに関わる方はぜひ参考にしてみてください。

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炎上を引き起こす広告表現とは

SNS時代の化粧品広告では、たった一言のコピーや一枚のビジュアルが、瞬く間に「炎上」を引き起こす火種となります。

特に、ルッキズム関連する表現は、配慮不足と受け取られやすく、炎上リスクが高いとされています。

外見(ルッキズム)に関する差別的表現

「美しさ」や「見た目」に関わるテーマは、化粧品広告において避けて通れない要素です。しかし、その表現が特定の外見を優遇・理想化する内容になってしまうと、意図せずして「差別的」と受け取られてしまうことがあります。

特に近年では、「色白こそが美しい」「若い肌が最高」などといった、特定の美的価値観を押しつける表現に対し、SNS上で批判の声が集まりやすくなっています。このような表現は「ルッキズム」と呼ばれ、現代社会では特に注意が必要とされている問題のひとつです。

ここでは、実際に炎上を招いた広告事例を取り上げながら、なぜその表現が問題になったのか、そしてどのように改善できるのかを考えていきます。

事例:ニベア「White is Purity」問題

2017年、ニベアの中東向けFacebookページに掲載された広告が国際的な批判を浴びました。制汗剤『Invisible』の広告に「White is Purity(白は純潔)」というキャッチコピーとともに白人女性の画像が使われたのです。

この表現は「白い肌=純潔・清潔」と暗に示すものであり、肌の色に優劣をつける人種差別的な内容と受け取られ、大きな炎上を招きました。最終的にニベアは広告を撤回し、公式に謝罪する事態に発展しました。

参考元:Nivea removes ‘white is purity’ advert branded ‘racist’/BBC

「美白」表現の国際的な背景と注意点

特に注意が必要なのが、日本では当たり前のように使われている「美白(whitening)」という言葉です。これは、日本では「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」といった機能性を表す言葉として一般的に使用されてきました。

しかし、欧米では「whitening(白くする)」という表現自体が、人種差別的価値観と結びつきやすいという社会的背景があります。過去にはユニリーバの『Fair & Lovely』というブランド名が批判され、2020年に『Glow & Lovely』へと変更を余儀なくされました。

参考元:Unilever renames Fair & Lovely skin cream after backlash/BBC

日本でもこの流れを受け、花王が「美白」表現を広告から撤廃する動きを見せたことは記憶に新しいところです。

炎上リスクのある表現例

以下のようなキャッチコピーは、炎上を招くリスクがあります。

  • 「美白こそが本当の美しさ」
  • 「白い肌なら人生はもっと輝く」
  • 「美白できない肌に、未来はない」

これらの表現は、「白い肌=美しい」という価値観の押し付けに見えやすく、他の肌の色や価値観を否定していると受け止められる恐れがあります。

表現改善のヒント:価値観の尊重と多様性の認識

一方で、以下のような表現であれば、個人の選択として美白ケアを尊重する姿勢が伝わりやすく、炎上のリスクも抑えられます。

  • 「美白も、自分らしさの一つ」
  • 「あなたの肌に、自信をくれる美白ケア」
  • 「美白を楽しむ肌に、自信が宿る」

ポイントは以下の通りです。

  • 「美白」自体を否定せず、あくまで選択肢のひとつとして提示する
  • 他の価値観や肌の色を否定しない表現にする
  • 「こうあるべき」ではなく、個人の意志を尊重するトーンを持たせる

このような配慮が、炎上を未然に防ぐカギとなります。

SNS時代の広告戦略に必要な視点

化粧品広告に限らず、現代のマーケティングでは「SNS映え」や「バズる表現」が重視されがちです。確かに、SNSで話題になれば、広告費をかけずに大きな注目を集め、売上につながることもあります。しかし、その裏には常に「炎上リスク」という副作用が潜んでいます。

短期的な話題性だけに目を奪われてしまうと、企業の信用やブランド価値に深刻なダメージを与える可能性があるのです。

炎上は一瞬で信頼を失う

SNSでは、広告表現の「一言一句」が切り取られ、文脈から独立して拡散されることがあります。
しかも、投稿から炎上までにかかる時間はわずか数時間。たった1本の広告が「企業の価値観そのもの」として批判の対象となり、その火消しに追われることで広告効果どころではなくなるケースも少なくありません。

さらに、「この会社の広告は不快だった」という印象は、商品やブランドイメージに長く影響を及ぼします。場合によっては、企業不買運動や炎上マーケティングのレッテル貼りにつながることさえあるのです。

「バズる」だけの短期戦略は危険

「バズり」を狙った過激な表現、挑発的なコピー、過度なビジュアル演出。一時的に注目を集めるには有効かもしれませんが、それは両刃の剣です。

SNSではポジティブな反応だけでなく、「これは差別的では?」「時代錯誤では?」といった批判も即座に飛んできます。しかも、炎上の火種は想定外の部分から発火することも多く、企業が意図していなかった受け取り方をされるケースも少なくありません

結果的に、「一度の炎上で長年のブランド構築が崩れる」可能性もあるという認識を、広告制作に関わる全ての担当者が持つべき時代です。

長期的ブランド価値を守る広告とは?

これからの広告に求められるのは、短期的な注目よりも“共感”と“信頼”です。SNSを活用するのであればなおさら、「いかにバズらせるか」ではなく、「どんな言葉が、どんな人に、どんな印象を与えるか」を慎重に設計する必要があります。

また、“誰もが安心して共感できる表現”を目指すことは、結果的に広い層にリーチすることにもつながります。ブランドとしての一貫性や倫理観が感じられる広告は、SNSでも「好感」「信頼」といったポジティブな評価を集めやすく、中長期的なファンの獲得にも貢献します。

炎上を防ぐために企業ができること

広告に炎上リスクが潜んでいることは理解していても、実際にどう対策すればよいのかは明確でないことも多いでしょう。SNSやオンラインメディアの影響力が増す今、炎上を未然に防ぐためには、広告制作のプロセスそのものを見直すことが不可欠です。

ここでは、企業や広告担当者が実践できる具体的な対策を紹介します。

①制作段階でのチェック体制を整える

まずは、広告表現が持つ意味や伝わり方を多角的にチェックできる内部の体制づくりが重要です。以下のような観点でチェックすることをおすすめします。

  • 固定観念の押し付けになっていないか?
  • 特定の層や個性を否定していないか?
  • 誰かを傷つける可能性のある表現が含まれていないか?
  • 表現に曖昧さがなく、誤解を招かないか?

これらを意識するだけでも、無意識のうちに入り込む「配慮不足」な表現を減らすことができます。

②社外視点を取り入れる(第三者レビュー)

社内メンバーだけで制作を進めていると、自分たちの常識に偏った判断になりがちです。そのため、可能であれば広告表現の最終確認を外部の視点からレビューしてもらうことが有効です。

  • 社会的視点に精通した法律や倫理の専門家
  • 多様性に関する知見を持つダイバーシティ・コンサルタント
  • ユーザー目線に立てるターゲット層のモニターなど

こうした「第三者の目」を取り入れることで、見落としていたリスクに気づきやすくなります。

③ダイバーシティ視点をもつチーム体制を作る

広告制作チームそのものに多様な価値観が反映されているかも重要です。同じような背景や感性を持つメンバーだけで作られた広告は、多様な消費者の感覚を捉えにくくなるため、あえてジェンダー、年齢、文化的背景の異なる人材を巻き込むことで、より多面的な表現が可能になります。

また、社内でダイバーシティやインクルージョンに関する研修や勉強会を定期的に行うことも、広告に対する感度を高める有効な手段です。

④万が一炎上した際の対応マニュアルを用意する

どれだけ注意しても、炎上を100%防ぐことは難しいものです。そのため、炎上時の対応フローを事前に準備しておくこともリスクマネジメントの一環です。

  • 担当部署の責任と権限の明確化
  • 初期対応のスピードと情報発信のタイミング
  • 謝罪・撤回を行う際の表現と手順
  • SNS・メディア対応のルール策定

冷静かつ迅速な対応ができる体制があるだけで、被害の拡大を最小限に抑えることができます。

まとめ

SNSの発達により、化粧品広告における表現の影響力はこれまで以上に大きくなりました。今では薬機法や景品表示法といった法令の遵守だけでなく、「社会的配慮」や「多様性への理解」が求められる時代です。

「白い肌が美しい」「女性はメイクをすべき」「コンプレックスは直すべき」といった価値観は、かつては当たり前のように使われていましたが、現在では多くの人に違和感を与え、炎上の原因になる可能性があります。

広告において重要なのは、消費者の悩みに寄り添いながらも、特定の外見や価値観を否定しないこと。多様な選択肢を提示し、個人の意思を尊重する表現が、共感を生み、ブランドへの信頼を高めます。

短期的な話題性ではなく、長期的なブランド価値を守る広告づくりが、今後ますます求められていくでしょう。

この記事から学んでおきたい関連知識

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