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インスタグラム広告の基本と魅力
インスタグラムは、世界中のユーザーに利用されるビジュアル重視のSNSです。特に若い世代にとっては日常的に使うコミュニケーションツールであり、「映える写真」や「おしゃれな動画」で情報をシェアする文化が根付いています。
インスタグラムのユーザー数と影響力
2025年現在、インスタグラムの月間アクティブユーザー数は世界で20億人以上、日本国内では約6,600万人とされています。日本の人口の約半分が利用している計算になり、その影響力はテレビや新聞などの従来メディアをしのぐ場合もあります。
また、インスタグラムは単なる個人の投稿にとどまらず、企業アカウントやブランドアカウント、インフルエンサー(影響力のある個人アカウント)が積極的に活用しています。これにより、広告のターゲットが細かく絞れるのも大きな強みです。
企業・個人・インフルエンサーにとっての広告価値
インスタグラム広告の魅力は以下のような点にあります。
- 視覚的な訴求力
写真や動画を通じて、商品の魅力や世界観をダイレクトに伝えることができます。 - ハッシュタグ活用による拡散
「#(ハッシュタグ)」を使うことで、フォロワー以外のユーザーにも投稿が届きやすくなります。 - インフルエンサーとのコラボ
特定の分野で影響力を持つインフルエンサーと組むことで、信頼感や共感を生み、購買意欲を高めることが可能です。 - ターゲティング広告の精度
インスタグラムはFacebook(現Meta)と連携しているため、年齢、性別、趣味嗜好など詳細なターゲティングが可能です。
その結果、企業だけでなく、個人事業主やクリエイターにとっても、認知拡大や売上向上の手段として欠かせない存在になっています。
ただし、こうした魅力的なツールだからこそ、ルールを守った運用が求められます。特に次章から解説する「ステマ(ステルスマーケティング)」問題は、近年の大きな注目ポイントです。
ステマ(ステルスマーケティング)とは?
インスタグラム広告を語るうえで欠かせないのが、「ステマ(ステルスマーケティング)」の理解です。ステマは近年、消費者保護の観点から厳しく規制されるようになっており、広告主・インフルエンサーの双方にとって無視できないテーマです。
ステマの定義
ステルスマーケティングとは、消費者に広告であることを隠して商品やサービスを宣伝する行為を指します。具体的には以下のようなケースが該当します。
- 企業や関係者が第三者を装ってSNSや口コミサイトに肯定的な投稿をする
- インフルエンサーやブロガーに金銭や商品を提供して宣伝させるが、その事実を明示しない
- あたかも個人の自主的な感想・口コミであるかのように装い、消費者の購買意欲を高める
つまり、消費者が「この情報は客観的な体験談だ」と信じ込むことで、実態以上の信頼を得ようとする手法です。
規制の背景と目的
こうした行為は消費者の自主的・合理的な選択を妨げる恐れがあります。
「友達や有名人がいいと言っているなら間違いないだろう」と思わせ、実際には広告であることを隠して誘導するのは、公正な取引のルールに反します。
そのため日本では、景品表示法の改正に伴い、2023年10月1日からステマ規制が施行されました。これにより、ステマが「不当表示」と見なされ、行政による措置命令や課徴金の対象となるようになったのです。
規制の本質は消費者の信頼を守ること
規制の本質は、「消費者が広告かどうかを正しく判断できる状態を作ること」にあります。単に「表示すればいい」のではなく、消費者がきちんと認識できるように配慮することが求められます。
たとえば、「#PR」「広告」「商品の提供を受けています」といった明示的な表記を付け、しかもそれが見えやすく、わかりやすい形で提示される必要があります。
次章では、具体的にステマ規制の内容と実践上の注意点を詳しく見ていきましょう。
ステマ規制の内容と実践ポイント
ステマ(ステルスマーケティング)規制は、2023年10月1日に施行され、景品表示法の対象として正式に取り締まられるようになりました。この章では、その内容と、実践で気をつけるべきポイントを詳しく解説します。
ステマ規制の基本内容
2023年10月以降、以下のようなケースは「ステマ(不当表示)」と見なされ、違反となります。
- 事業者がインフルエンサーや第三者に依頼し(表示内容の決定に関与し)、商品・サービスを紹介させる場合
- その際、「PR」「広告」「商品の提供を受けています」などの明示的な表示がない場合
特に注意が必要なのは、影響力の高いインフルエンサーの場合です。単に商品を渡し、投稿内容の判断をインフルエンサーに任せても、事業者が関与したと見なされるケースがあるため、事前に「広告であることを明示してください」と依頼しなければなりません。
表示ルールとNG例
ただし、単に「#PR」と書けば良いというわけではありません。消費者がきちんと認識できる形で表示されなければ、規制違反になる可能性があります。以下のような表示方法は避けましょう。
- 大量のハッシュタグに埋もれさせる
→例:「#ダイエット #筋トレ #夏までに痩せる #PR」
→見落とされやすくなる。 - 動画で一瞬しか表示しない
→見ている人が気づかない。 - 背景と同化するような色で表示する
→読みにくくなり、認識されない。 - 文章やコピーに対して極端に小さい文字を使う
→デザイン性を優先しすぎて表示が目立たなくなる。
こうした場合、「書いてあったのに」という言い訳は通用しません。消費者に「分かりやすく、見えやすい」形で表示することが重要です。
実践上の注意点
- 投稿前に事業者が内容をチェックする
→特に表示の場所や大きさ、見やすさを確認する。 - インフルエンサーに具体的なガイドラインを伝える
→「投稿の最初に#PRを入れる」「ハッシュタグではなく本文中で明記する」など。 - LP(ランディングページ)転載時も注意する
→Instagramの投稿をLPに埋め込む際、表示が削除・欠落しないよう確認する。 - ツールや自動収集システムにも配慮する
→特定のハッシュタグや投稿を自動で表示する仕組みでは、広告表記が失われないよう、LP側に「※PRを含みます」などの注意書きを設置する。
実際の違反事例と教訓
ステマ規制は施行されてから実際にいくつもの違反事例が出ています。ここでは直近の代表的なケースを紹介し、どんな教訓を得られるかを解説します。
日本国内の最新違反事例(2023年10月施行後)
2023年10月から2025年4月中旬までに、以下の6件がステマ規制違反として行政処分を受けています。
日付 | 企業名 | 内容 |
---|---|---|
2024年6月6日 | 医療法人社団祐真会 | 診療サービスに係るステマ表示 |
2024年8月8日 | RIZAP株式会社 | フィットネスクラブに係るステマ表示 |
2024年11月13日 | 大正製薬株式会社 | サプリメントに係るステマ表示 |
2025年3月17日 | 医療法人社団スマイルスクエア | 歯列矯正に係るステマ表示 |
2025年3月25日 | ロート製薬株式会社 | サプリメントに係るステマ表示 |
2025年3月28日 | 株式会社ダイエットプレミアム | サプリメントに係るステマ表示、有料誤認・有利誤認 |
特に注目すべきは、6件中4件がインフルエンサーの投稿を自社LP(ランディングページ)に転載する際、広告表示を明示しなかったという理由で処分を受けた点です。
具体的な問題点と背景
- Instagram側ではしっかり表示していたが、LPに転載する際に抜け落ちた
Instagram投稿を自社サイトで紹介する場合、公式の埋め込みコードを使うことが多いですが、その際「タイアップ投稿」ラベルや「#PR」などが埋め込みに反映されないことがあります。 - 制作会社や代理店との連携不足
「制作会社に任せていたから気づかなかった」「広告主が確認しなかった」といったケースも散見されます。 - 一時的・小規模なキャンペーンでも対象になる
規模に関係なく、消費者に誤解を与える表示はNGです。
教訓と対策
- 出稿前の最終チェックを徹底する
→LPやキャンペーンページに転載する際、広告表示が抜け落ちていないか確認。 - インフルエンサーへの指示を明確化する
→SNS側の投稿だけでなく、転載時の表示にも注意喚起する。 - 制作会社・代理店と密に連携する
→制作現場に法規制の知識があるとは限らないため、広告主側がしっかり確認・指示を出す。 - LP側に補足の注意書きを設置する
→例えば、埋め込みコード周辺に「※本ページにはPR投稿が含まれます」と明示。
これらの教訓を実践することで、ケアレスミスによる違反リスクを大幅に減らせます。
次章では、ステマ規制以外の関連法(景品表示法、薬機法、健康増進法)について解説します。
ステマ規制以外の関連法
インスタグラム広告では、ステマ規制だけでなく、他の法律も厳密に守る必要があります。特に重要なのは「景品表示法」「薬機法」「健康増進法」です。この章では、それぞれの概要と注意点を解説します。
景品表示法
景品表示法は、「消費者に対して誤解を与える表示」や「過大な景品類の提供」を禁止する法律です。
ポイントは以下の通りです。
- インフルエンサーが広告主から依頼を受けて商品やサービスを紹介する場合、その投稿は広告と見なされる。
- 投稿内容に根拠のない誇大表現(例:「絶対に痩せます」「世界一効果があります」)が含まれていると、違反と見なされる。
- 罰則対象は主に広告主であり、インフルエンサー側は直接処罰されないが、ブランド価値の毀損やトラブルの原因になる。
- 投稿内容の事前確認をルーティン化。
- 誇大表現や未確認情報を使用しないガイドラインを設ける。
薬機法
薬機法は、医薬品、医療機器、化粧品などの効能・効果に関する表示を規制する法律です。
- 健康食品・雑貨なら、医薬品的な効果(例:「これを飲めば糖尿病が治る」)を謳うのはNG。
- 化粧品なら、「シワが完全になくなる」などの医薬品的な効能を謳ってはいけない。
ここで注意すべきは、薬機法は「何人も守らなければならない」ルールだということです。つまり、広告主だけでなくインフルエンサー本人も違反者として処罰される可能性があります。
- インフルエンサーにも薬機法の基礎を理解させる。
- 投稿前に薬事チェックを行う。
健康増進法
健康増進法は、食品の広告や表示について、虚偽・誇大な内容を規制する法律です。
- 例:「このお茶を飲むだけで脂肪がみるみる落ちる」という表現はNG。
- 規制対象は「食品として販売に供する物に関する広告その他の表示をする者」で、広告主だけでなくインフルエンサーも含まれる場合があります。
- 食品広告の内容を慎重に精査。
- インフルエンサーに過剰表現を避けるよう依頼する。
これらの法律は、すべて消費者保護と公正な競争を守るために設けられています。法律を正しく理解し、違反しない広告運用を心がけることが、長期的なブランド価値の維持につながります。
次章では、失敗しないための具体的な運用体制づくりについて解説します。
失敗しないための運用体制づくり
ここまで解説してきたステマ規制や関連法を守るには、広告主側の「運用体制づくり」が非常に重要です。ただ法規制を知っているだけではなく、日常の業務に落とし込み、実践する仕組みが必要です。この章では、具体的な運用ポイントを紹介します。
投稿前のチェックリストを作る
投稿前の最終確認は、ケアレスミスを防ぐための基本です。以下のようなチェックリストを作成し、必ず確認を行いましょう。
✅ 広告表示(#PR、広告、提供等)は分かりやすく記載されているか
✅ 表示は見えやすく、ハッシュタグに埋もれていないか
✅ 投稿内容に虚偽・誇大な表現はないか
✅ 薬機法・健康増進法に抵触しない内容か
✅ LPや自社サイトへの転載時に広告表示が欠落していないか
チェックリストをチームで共有し、できれば複数人でダブルチェックする体制を整えましょう。
インフルエンサーとの契約・ガイドラインの重要性
インフルエンサーに依頼する際は、口頭だけでなく契約書やガイドラインを作成して渡しましょう。
- 広告であることを明示する義務
- 誇大表現や未確認情報の禁止
- 法律違反が発覚した場合の責任分担
- 投稿前の内容確認・承認フロー
- ハッシュタグの書き方例
- 文字サイズや配置のルール
- NGワード・NG表現集
特に最近は、インフルエンサー側も法律知識が十分でないケースが多いため、事業者側から積極的に情報提供する姿勢が求められます。
法規制の最新情報をキャッチアップする方法
法律やガイドラインは更新されることがあります。最新情報をキャッチアップし続けるためには次のような方法がおすすめです。
- 消費者庁・厚生労働省・東京都などの公式発表を定期的に確認する
- 広告法務に詳しい弁護士や専門家と相談できる体制を整える
- 業界セミナーやウェビナーに参加する
- 制作会社・代理店と情報を共有し合う
これらを組み合わせることで、法律違反のリスクを低減し、安心してマーケティング施策を進められます。
まとめ
インスタグラムは今や、企業や個人が商品・サービスを効果的にプロモーションできる非常に強力なツールです。
しかしその一方で、ステマ(ステルスマーケティング)や虚偽誇大広告といった問題に対して、法律の規制が年々厳しくなっています。
特に2023年10月から施行されたステマ規制では、「広告であることを隠さない」ことが基本中の基本です。単に「#PR」と入れれば良いのではなく、消費者がきちんと認識できる形で表示する必要があります。
また、景品表示法、薬機法、健康増進法といった関連法にも注意を払い、誇大表現や誤解を生む表現を避けることが求められます。違反が発覚した場合、広告主である企業側が処罰の対象となるだけでなく、ブランドの信頼性が大きく損なわれるリスクがあります。
成功するインフルエンサーマーケティングの鍵は、以下のポイントにあります。
✅ 法律・ガイドラインを正しく理解する
✅ 投稿内容やLP転載時の最終確認を徹底する
✅ インフルエンサーに具体的でわかりやすいガイドラインを提供する
✅ 法規制の最新情報を継続的に収集する
適切な対策を講じることで、リスクを回避しながら、消費者に支持される健全なマーケティング活動を実現できます。
インスタグラム広告を通じて、信頼と成果を両立させる運用を心がけていきましょう。
参考元:消費者庁
この記事から学んでおきたい関連知識
インスタグラムは今や、特に若年層にとって欠かせないソーシャルメディアのひとつです。月間アクティブユーザーは世界で20億人以上、日本国内でも約6,600万人といわれており、その影響力は計り知れません。
企業や個人事業主、タレント、そしてインフルエンサーにとって、インスタグラムは商品やサービスを効果的にアピールできる絶好のマーケティングツールです。写真や動画を通じて「映え」を演出し、視覚的にユーザーの心をつかむことができるため、近年ますます活用の場が広がっています。
しかしその一方で、インスタグラム広告には広告主やインフルエンサーが守るべき法律やルールが存在します。特に、2023年10月に施行された「ステマ規制(ステルスマーケティング規制)」は重要です。これを知らずに施策を進めると、悪気がなくても違反とみなされ、行政処分やブランドイメージの毀損につながるリスクがあります。
本記事では、インスタグラム広告におけるステマ規制を中心に、景品表示法、薬機法、健康増進法などの基本知識と注意点をわかりやすく解説します。インフルエンサーを起用した広告で成功するために、ぜひ最後までお読みください。
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